第1章

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「お前は本当に死んでくれれば良かったのに」 ケイの姉の、夏々(なつか)ちゃんが庇ったせいで、ケイはまだ生きている。 「ひっでぇな、お前」 「だってお前がちゃんと死んでくれれば、日子のことはどうにも出来た。日子は、夏々ちゃんのこと、忘れてる、か、ら」 ケイが死んだと、勘違いしてる。 「お前さえ死んでくれれば―――!!」 「……ってかさ、いつもは日子は俺のこと、どういう風に覚えてるの?俺、こっから出て行ったから解んないんだよね」 「……五年前に、村の外から里帰りしてきた子になってる。んで、また会う約束をしてるんだ、って言って、ずっと待ってる」 そして夏々ちゃんの命日(日子の中ではケイの命日)だけ、ケイを殺したのほあたしだ、と半ばパニック状態になる。   「そっか……そっか」 「なにがそっかなのか知らないけど、用がなくなったんならさっさと消えて」 殺したくなる、とあたしは言った。 ひっでぇな、お前、とケイは言った。
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