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「えぇと、」
「ごめんねぇ、日子ちゃん。誰もここに降りないよ」
「そ、うですか」
ぶろろろろ、とまた危なっかしい音を立ててバスが発車する。あたしのこの奇癖は、村の中ではすっかり有名になっている。五年前の約束なんて、と微かに嘲笑を含めて。
「五年、は、長いもんねぇ……」
かはは、とやたらと乾いた笑い声が溢れる。
バスは一日二本しかない。夏休みの期間はいまさっきのお昼の便が出るけど。次の便は七時だ。村まで帰るのは、少し辛い。
「どうせ暇だし、待とうかな」
*
「あぁ全く、これだから日子は」
あたしは近道と言う名の獣道を歩く。ぱたぱたと、汗が滴る。
双子の姉の日子は、きっとまだバスを待っている。そしてバスの運転手さんの山崎さんはにっこり笑って降りる人はいない、と告げる。
「いる訳ないじゃん、ばか日子」
あたしはケイを知っている。
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