しょっぱいマシュマロ

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「……わかった。 ごめんな。イチカの気持ち……ちゃんとわかったから」 ……あああ、脇役、玉砕。 これにて退場……か。 恋愛の神様は、やっぱり俺が嫌いなようだ。 だけど神様……せめて4月から、イチカと別のクラスにしてください。……一緒はつらいです。 「……い、今は無理でも」 冷たい神様に祈っていると、イチカが俯いたまま話を続けた。 「……来年は、今年のよりもっと凄いのを作れるように頑張る……から……」 ……え?  「……その時……もう一度、欲しいって言ってくれる?」 顔を上げたイチカが、潤んだ目で俺に尋ねてくる。 「私のチョコ……食べたいって言ってくれる?」 ……悶死。   ず、ズルいぞイチカ! その顔はズルいよ!!  そんな顔されたら、卒業できないじゃないか!! 早々に留年を決意し、イチカ姫を抱きしめた。 「俺、待ってる。……ずっと、待ってる」 八年も頑張ったんだ。あと一年ぐらい、どおってことない。 うん、全然平気だ! ……で、でも、できれば半年……いや、三ヶ月ぐらいにしてもらえると……すごく嬉しいんだ……けど……。 「ありがとう。……カオルちゃん」 俺の腕の中で、そう囁くイチカ。 この寒空の下、俺の身体が燃えるように熱くなる。 「こらぁ!! 平瀬ぇぇぇえ!!!」 ドカーンと扉を開けて、屋上に躍り出てきたのは…… 「谷っち!!」 ……俺より熱苦しい男だった。 目の前までやってきた谷っちが、イチカを太い腕で押しのけて、俺の胸倉を掴む。 「お前!! 嘘ついたな!! 南先生は、マッチョが嫌いじゃないと言ったぞ!!」 ……わざわざ南ちゃんに聞いたの? 嘘だろう?! だけど、ズルいよ! マッチョを前にして「マッチョが嫌いだ」……なんて、南ちゃんも言えないじゃん! そう反論したいが、そのまま黙って締め付けられた。 「で、でも! 好きでもないと思います!」 なのに、俺の横でイチカが余計なツッコミをいれる。  ……ダメだって! 火に油を注ぐだけだから! 「う、うるさいぞ、藤吉! 嫌いじゃなければ、好きになる可能性があるだろう!!」 ……ないよ。 まったくないって。 だって、南ちゃんは……
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