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姉貴の持ってる少女マンガは、全部がハッピーエンドだった。
どんなに仲の悪い男女だって、最後は恋人同士になって終わる。
幼なじみが主役の二人なら、最初から運命の相手だって約束されたようなものだ。
てっきり俺たちもそうだと思ってた。
赤い糸でつながっていると信じてた。
……なのに。
俺、いつから脇役になっていたんだろう……。
ため息をつきながら、校舎の階段を上っていた。
「平瀬!」
下から俺を呼ぶ声が聞こえたので振り返る。
ミタさんが手招きしていた。
出来れば会いたくなかった人物だ。
気が進まないけれど、今上った階段を下りていく。
「はい、なんですか……」
「お前、昼メシどうしたんだ?」
「え? あ、食べました。 ……お、俺、早メシなんです」
怪訝な顔をする先生に、慌てて言い繕う。
時計を見ると、たしかに昼休みが始まってまだ10分も経っていない。
……ちょっと、早すぎか。
そう思ったが、言い訳するのも面倒なのでそのまま黙りこんだ。
「それより平瀬、お前、どうして部活に出てこないんだ? 最近ずっと休んでるだろ?」
俺が所属しているバスケ部の熱血顧問……斉藤美和(ヨシカズ)先生が睨んでくる。
有名シンガーソングライターに名前が似ているせいか、数年前から愛称が「ミワちゃん」から「ミタさん」に変わったそうだ。
そんなどうでもいい、先輩情報が頭に思い浮かんだ。
「おい、聞いてるのか?」
叱られて我にかえる。
「す、すいません。 ヒザが少し痛くて……」
……慌てて、ウソをついた。
「え?! 怪我か?」
「ち、違います。大丈夫です。……最近、痛みも引いてきましたから」
「ホントか? ……大丈夫なのか?」
思ったより心配されたので、ヒザを曲げ伸ばして健全さをアピールする。
「……そうか。ならよかった。 しかし、それで近頃プレーが散漫だったんだな……。目に余るからレギュラーを外したけども……なあ平瀬、そういう事はちゃんと先生に相談しなきゃダメだろ」
「すいません。スタメン落ちがイヤだったんで……」
「バカ! 無理して怪我でもしたらどうするんだ!……それに、お前の実力なら、すぐに戻れるだろ。 焦ってどうする。 ったく、春休みまで休んでいいから、ちゃんと病院に行ってこい」
「あ、はい……わかりました。 ありがとうございます。本当にすいませんでした」
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