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きっかけは、お互いの名前だった事を思い出す。
俺の名前は平瀬郁なので、意地の悪いヤツは「カオルちゃん」と、わざと女の子のように呼ぶ。
昔から目立つ存在だったので、そんなヤツに腹を立てる回数も多かった。
そして、小5で転校してきたマキも、女みたいな名前だとクラスメートにからかわれて孤立していた。
そんなマキに、俺から「友達になろうぜ」と誘った。
最初は、女みたいな名前で同じ苦労をしているマキに同情したからだった。
だけど、話すうちにそんな事はどうでもよくなっていた。
気づけば意気投合していたパターンだ。
しかも、マキはとんでもなく頭が良かったので、こっそりと勉強を教えてもらえた。
おバカな俺が成績上位に居られるのも、ほぼ、マキのおかげだ。……ホントに感謝している。
そして、いつしか一番側にいる友達……親友になっていたんだ。 なのに……。
……はぁ。 俺、小っちぇーよなぁ。
自分の器の小ささにゲンナリする。
「……ごめん、ワザとじゃないんだ。ちょっと動揺して……。ほら、俺より先に彼女つくるんだもん。イケメンを看板に掲げている俺としては、敗北感が拭えないわけよ」
適当な言い訳を見繕う。
「だからさ、ごめん。イチ……藤吉と仲直りしてくれよ」
そしたら……今度はちゃんと祝福するから。
「……しない」
無表情のまま、マキが首を横に振る。
「え? ……な! お、怒んなよ。 シカトとか、もうしないし……。つーか、もう話してるじゃん。機嫌直せよ……」
気づけばなぜか、イチカとマキの間を取り持とうとしていた。
……俺、何やってんだろう。
自分のやっている事がわからなくなる。
「郁は……何で黙ってんの? 藤吉さんの事好きなんだろ? 告白しないの?」
矢継ぎ早に質問されて驚く。
俺の気持ちがマキにバレているなんて、思ってもみなかった。
「言い方悪いけど……藤吉さんホントに鈍いから、郁の気持ちに全く気づいてないよ」
……え! マジで?
「本気であの子、郁をお隣さんとしか思ってないから……」
重度のショックを受けた。
これまで自分なりに、好き好きアピールをしてきたつもりだったからだ。
……こんなに頑張ってきたのに? ……まったく? ……マジで?
しばらく、ひとり反省会が続きそうだ。
……俺、立ち直れるだろうか?
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