しょっぱいマシュマロ

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「……やっぱりな」 俺は何も答えてないのに、マキがそう言ってニヤリと笑う。 くっそぉ……マキは頭がいいぶん、どこか性格が歪んでんだよな。 そう思って睨みつけた。 そんな俺の両肩に手を置いてマキがつぶやく。 「じゃあ、告白、頑張ってね」 ……は? 告白? 意味もわからず、マキが指差す出入り口に目を向ける。 ……え、ウソだろ。 そこにイチカが立っていた。 「呼び出しておいたから……じゃあ、俺は戻るね」 そう言ってイチカとすれ違い、校舎の中にマキが消えた。 ゆっくりとイチカが近づいてくる。 「隣、座っていいかな?」 マキが告白なんて変な事を言うから、緊張して声が出せない。 ただ、思い切り首を縦に振った。 「まだ、ちょっと寒いね」 両手で自分の腕を抱きしめるイチカ。 ……やっぱり、可愛い。 俺は、慌ててジャケットを脱いでイチカの肩にかけた。 「え? ダメだよ。 カオルちゃん、ワイシャツだけになっちゃうよ」 「いいんだ! 俺は全然平気! ……マジで、熱いぐらいだから」 熱いわけがないけれど、イチカが温もるなら本当に平気だった。 なんなら、ギューっと抱きしめて温めてやりたいが、それはさすがに行き過ぎなので自重する。 「……ありがとう。カオルちゃん」 ……ああ。このエクボに、俺はメロメロなんだよな。 そんな、メロンパ●ナちゃん級のメロメロパンチな笑顔に、俺の敗北記録は今もなお更新中だ。 バイキ●マンだって、もうちょっと強いぞ。 「あれ、ポッケがモコモコしてる。 ……何が入ってるの?」 俺がメロメロパンチにやられている間に、イチカが俺の上着のポケットに手を入れていた。 マズイ!……と思った時には遅かった。 「え! こ、これ……Ponta-Ponneの限定マシュマロだ! どうしてカオルちゃんが持ってるの? 売り切れで買えなかったのに……」 ……それは、イチカの為に予約したからだよ。 そう言いたいけど、グッと我慢する。 イチカにチョコをもらえなかった俺に、それを言う資格はない。 「あ、もしかして……市村さんのチョコのお返し?」 「な! 違うよ!!」 なぜ、そこに市村さんがでてくるのか、ちっともわからない。 「いいなぁ、市村さん。……私も食べたかったな」 ……だから、違うって。 そう。イチカの唯一厄介な点は、この、他人の話を全く聞かないところだ。
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