第1章

3/31
前へ
/31ページ
次へ
 ユージは火が消えるのを確認すると無言のまま移動した。壁にはこの島ではもはや見飽きたモニターと数字盤とスイッチがあった。ユージが近づくとモニターが点き録画のサタンが現われたがユージは意にも介さず偃月刀でモニターを破壊し、そして記憶していた番号を打ち込みスイッチを押した。すると天井に釣られた鉄篭がゆっくりと下りてくる。  この時ようやく生贄となっていた数人が、自分たちは助かったという現実に気付き歓声を挙げた。  その時、監視していたのであろう<死神>が一人飛び込んできた。だがそれもユージ相手では注意を僅かにひくことしかできない。ユージは一瞥すると<死神>のSMGの銃口が向くより早く背中のステアーAUGを取り一瞬で射殺すると一度廊下に出て他の<死神>がいないのを確認し、ゆっくり部屋の中に戻った。吊るされていた山本他三人はすでに地に着き、他に気の早い男たち数人は檻から飛び降りていた。 「俺はユージ=クロベFBI捜査官兼CIA特別捜査官だ。君たちを助けに来た。俺はナカムラ捜査官の相棒でサクラの親だ。今から俺の言うことをよく聞け!!」 ユージは叫びながら歩いていくと、恐怖でパニックを起こした山本は奇声に似た悲鳴を上げた。ユージはバックの中から小さな使い捨て注射器を取り出すと素早く山本を捕まえ静脈に打ち込む。山本にとってそれは思いもよらない事だったのだろう、目を見開き震えだすがそれも数秒の事、意識を失い崩れた。人質たちがそれを見てどよめくがユージは構わず一番近くにいた20代の男に山本を預け、全員を見渡し三つの点を確認した。  ヘンな注射をこの島で打たれたか、ケガや発熱はあるか、今冷静に話が聞けるかの三点だ。最後の点はおそらく本人たちではわからなかっただろう。ただ全体の雰囲気からして感染者である可能性はないと判断した。  ユージには長々とここで時間を割くことはできない。まだ混乱があることは承知でユージはこの中に責任者、リーダーシップが取れる人間がいるか聞いた。すると日Nテレビの社員の島という男とチーフADをしている小木という女性が名乗り出た。あとはタレントが二人、残りは全員アルバイトだった。 「よし、君たち二人に命じる。ここにいる全員を指揮してナカムラ捜査官と落ち合え。後は彼の命令か、AS探偵団の10歳の女の子の命令に従え。女の子は俺の娘だ。理解したか?」  早口で命じていく。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加