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この対処方法は簡単だった。この中で一番射撃が巧いサクラが宮村からHKMP5を借りて素早く狙撃、さらに一時的に上空を移動し狂犬たちを殺しては急降下、できるだけ屍を一箇所に集めた。飛鳥も頭上に物を投げ蝙蝠を何匹か落とした。
「よし……! 新しい案を考えるくらいの時間はできた」
サクラは羆や虎の攻撃が止んだのを確認すると三人は姿勢を低くして頭を突き合わした。
だが新しい良案が出るわけもない。弾も残り少ない。
この現状で、宮村は決した。
「これまでの作戦案で分かった事があるわ」
暗い表情で苦々しく頭を垂れたまま宮村は呟いた。
「どないしたんや? ミヤムー」と不思議そうに顔を見る飛鳥。
「………………」
サクラの眼はするどく光った。
宮村は俯きながら言葉を続けた。
「私が足手まといとなる事は確定みたいね。はっきり聞くけど、サクラちゃんと飛鳥ちゃんの二人だけなら、この状況下でも100%生きて脱出することはできるんじゃない?」
「そ……それは…… そんなことはないと思うで!?」と慌てて答える飛鳥。だがサクラは黙った。飛鳥は「ちょ、サクラ! あんたなんで黙る!?」と小声でつっこむがサクラは答えなかった。サクラにはそれを否定できないからだ。そして今はもう下手な気遣いをする時でないこともサクラと宮村は分かっている。
宮村は肩を震わせた。俯いた顔から、涙が落ちた。
「じゃあ……結論は一つね。案10……私が囮になるから二人は脱出する。私が囮になって出口とは別方向に走るわ。人間の最高時速は約45キロ……必死に逃げれば、私が虎か羆に捕まるまで2分は稼げる。そして……」宮村は涙を零し、肩を震わせながらも気強く微笑む。
「私が……食べられている時間……は…… 私は身長162センチで50キロ……致命傷を受けるのが遅ければ10分は……稼げる。銃で……応戦しながらだと15分は確実に稼げると思う」
宮村は泣きながら冷静にガバメントを抜くと弾を確認した。マガジンの弾は5発、銃に1発……
「一発は……自分用として、五発は牽制できる。うん、10分は稼ぐわ。二人は逃げて」
「ちょ、ちょいまちっ! 早まるなミヤムーっ!!」
「他にどんな手があるって言うのよ!!」
宮村は叫んだ。そして泣き崩れる。宮村だって死にたいわけではない。だが彼女は聡明すぎた。これ以外どう考えても他に選択肢はないのだ。
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