第1章

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 宮村は泣きながら「冷たい方程式。……仕方ないことよ……」と言い切る。  その宮村の勇気に飛鳥もたじろぎ言葉を失った。サクラが無言なのは宮村の正しさと決意を尊重しているからだ。  ついにサクラが口を開いた。 「そこなら覚悟しているなら、いいわ。だけど、ミヤムーを殺すのはあたしよ」 「?」  サクラは立ち上がった。  宮村を無残に喰われるくらいなら、仕方がない。サクラのフルパワーを出そう。  もしかしたら宮村は<死神>よりサクラを怖れるかもしれない。だがこんないい少女を死なせるよりはるかにマシだ。 「あの馬鹿は怒るかもしれないけど、ここは仕方…………」 「それやぁーーーーっ!!」  飛鳥がびしっとサクラを指差す。唐突すぎて何が何だかさっぱり分からず唖然となるサクラと宮村。そんなシリアスな空気を無視し飛鳥は新しい案を叫んだ。 「『案11』……屈辱的全面土下座降参っ!!」 「……ナニソレ……」 唖然となる宮村。次の瞬間、サクラは飛鳥が何を言っているか理解し「その手かぁぁぁぁーーっ!!」と叫んだ。ナニゴトかと宮村は二人を見る。 「時間がない! いくでぇ~サクラ!!」 ハイテンションで叫ぶ飛鳥。 「仕方ないなぁ……」 サクラも立ち上がり、二人は揃ってその場に土下座し叫ぶ。 「「降参―――っ!! ぎぶあーーーーっぷ! 助けて、JOLJUえもんーっ!」」 「…………へ??」 目が文字通り点になった宮村。  構わず二人は大声で土下座を続ける。 「まいったぁぁぁっ!! 助けてくれぃ、うーぱーるーぱー犬もどき様ぁぁぁ!」 「お手上げ! サクラちゃんのおやつ譲るから助けろ! へちゃむくれニートぉぉぉ!」  その時だった。サクラの携帯電話が鳴った。 『誰がへちゃむくれだJO!』  と、JOLJUは言い、すぐに電話を切った。  全員、沈黙。  すぐにサクラと飛鳥が騒ぎ出した。 「やっぱ観てるんやないかぁぁぁーっ! 観てるんやったら助けンかいっ、ぼけ犬もどきニートっ!」 「そうだゾ!! サクラちゃんのおやつ三日分で手を打つ! 助けろJOLJUっ!!」  再び電話。そしてJOLJUが一言。 『イヤだJO!』  ……………………  これに大声で罵声を浴びせるサクラと飛鳥。全くワケがわからない宮村。間に入ることもできない。このよくわからないやりとりのおかげで涙は干上がってしまった。
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