ある忍者の日常的な陰鬱

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「ここを取っても、私があの町から離れたくない気持ちがあった事は容易に想像がつくかも知れない。  本当は、義輝と・・・もっと、思い出を作りたかったんだがな」  修羅は寂しそうに笑った。  そこから、物憂げになって・・・再び、空を見上げながら口を開く。 「私が今の町ーー大原田市に引っ越す事になってしまったのは、母の死が原因だった。  母は元々、病弱でな?  少なくとも、私の記憶にある限りでは、ちょっとした事で体を安静にしないと行けない程・・・病気が進んでいた」  修羅は呟く様に言う。  追憶にあった当時の幼い自分を思い出し・・・物憂げな瞳に沢山の悲しみが生まれていた事が、義輝の目からも見てとれた。 「私は無力だと・・・幼いながら痛感していた。  母がこんなに苦しんでいるのに・・・死ぬかもしれないのに、私はだただた・・・母の苦しむ姿を傍観するしか、なかった」  ・・・涙が出た。  きっと、無意識なのだろう。  空を見上げていた修羅の瞳から一粒の涙がこぼれ・・・頬を伝って、地面にこぼれ落ちた。 「結局、私は死期が迫る母になにもしてやる事が出来ないまま・・・母は息を引き取った。  母の死を切っ掛けに、父は私を連れ、父の実家がある大原田市に引っ越して来た。  きっと・・・父もやるせなかったんだと思う」 「・・・そうか」  修羅の言葉に、義輝は頷いた。  頷く事しか、出来なかった。     
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