ある忍者の日常的な陰鬱

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 こうして、義輝の頭痛のタネが1つ生まれたのだが、とりあえず余談程度にして置こう。 「話が脱線してしまったな。  ともかく、私は、お前が好きだから、真を張り倒してでも奪いに行く! 覚悟しておけ!」 「いや、脱線したままだから!  てか、脱線しまくって、電車が横転する勢いだから!」  二人の話しは遅々として進まなかった。 「そうだな。  それじゃ、今度こそ話の続きをしよう。  大原田市に引っ越して来た私は、思わず圧倒された。  他の町・・・いや、世界レベルであっても、こんなに優れた科学力を保持する場所はないと、本気で思えた。  この気持ちは、今でも変わらない。  それだけ、忍具は今の常識を逸脱した、未来の道具なんだ。  ・・・だから、私は決心した。  この忍具で、世界にいる何万もの命を救おうーーと」  かつて、無力だった自分を、過去の自分を清算する意味でも。 「しかし、失敗に終わった。  結局、忍具は持ち出せず・・・私の計画はお前に阻まれ、全てに終止符が打たれた。  もう・・・今の私が出来る事など、忍具を他の町に持ち出そうとした大罪の沙汰を追って待つのみ」  言い、修羅は俯く。 「そこなら、心配いらないから、安心して」  刹那、予想だにしない場所から、声が転がって来た。  声の主は・・・瞬だ。 
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