ある忍者の日常的な陰鬱

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「・・・なに?」  予想だにしなかった方角からの声に、思わず修羅は目を丸くする。  他方、近くにいた義輝も右ならえ状態でキョトンとしていた。 「会長・・・生きてたのか」 「勝手に殺さないで欲しいから!」  更に真剣な顔して、臆面もなくサラりと失礼な事を言う義輝へと、ソッコーでツッコミを入れていた。 「まぁ、確かに? さっきのダメージはかなり来てるとは思うし・・・実際、立ってるのがやっとなのは認めるけどーー」  そこまで答えた瞬は、握りこぶしをギュッ!と握りしめ、力一杯に声を吐き出した。 「誰も死んでなんかいないから!」  叫んだ瞬は涙目になっていた。  どうやら、結構、マジで怒ってるらしい。 「はは・・・ごめん、会長。  ほら、会長ってさ? 女してる時って綺麗だから、つい意地悪したくなるって言うか、さ?」  義輝は、両手で『抑えて抑えて』的なジェッチャーしつつ、顔で苦笑しながらも返答して見せる。 「そ、そうなの・・・?」  この言葉に、瞬は少しだけ頬を赤らめた。  ーー刹那。 「・・・ほほぅ」  背後から、ヤケに冷たい声が転がって来る。  いや、声と言うか・・・背筋が寒い。 「おわっ!」  見れば、今にも掴みかかりそうな勢いで、背後に張り付いている修羅の姿が。 「そうか・・・義輝の好みは、そう言う銀髪で大人っぽくて、胸とかボーンと出てるのがいいんだな?  私など、アウトオブ眼中なんだな?  とりあえず、死んでくれ」 「いやぁぁぁぁぁっっっ!」  鋭い眼光と同時に、右手にすちゃ! と構える小刀を持った修羅を見て、義輝はいつになく命の危険性を感じ、情けない悲鳴なんぞをあげていた。  ・・・本当、なにやってるんだろうね。  
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