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もし、これが本当なら・・・瞬の言う『安心して』と言うのは、そのまま言葉通りの意味を持つと述べて、相違ないだろう。
「しかし、全権とは・・・市も思いきった事をするな」
「否定はしないよ。
・・・ただ、ここには、少し曰くがあってね。
ーーま、その辺については、後で話す時が来るでしょうし、その時にでも話す事にするよ」
瞬は柔和な笑みを作りながら、修羅へと答えた。
「・・・そうか」
修羅は短く頷く。
彼女の言う『曰く』とやらが、どんな物なのかは、正直わからない。
正確に言うのなら、その片鱗くらいなら、ある程度の目星をつける事が出来る。
結局の所、今の修羅が行動にまで転じてしまった所に、瞬が言う曰く付きの部分にぶつかって行くのだから。
こんな事を言うのも、他ではない。
元々、修羅は忍具を大原田市から持ち逃げしようとしていた訳ではなかったのだ。
忍具を市の外に持ち出す行為は、市が全面的に禁じており、かつまた、この禁を破った者への処罰も厳しい事を修羅は知っていた。
挙げ句、忍具を取り締まる地元の自警団は、選りすぐりの忍者で形成されている、最強の忍者集団。
さしもの修羅も、この忍者集団を相手に市外まで逃げきれる自信など、微塵もなかった。
それだけに、暴挙と称して良い行為だと思ってはいた。
しかし、彼女はその暴挙に出てしまうのである。
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