ある忍者の日常的な陰鬱

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「否定はしないよ・・・いくら何でも、単なる小市民に取り締まりさせるなんて、正気の沙汰じゃないと、私も思う。  けれど・・・実際は、猫の手も借りたい程に忙しくーーいや、違う。  深刻でね・・・。  結構、市がピンチなんだよ」 「市が、反乱分子に負けるかも知れないって事か?」  瞬の言葉に義輝は無意識に顔を強張らせて答えた。 「ーーそうかもな」  直後、修羅が同意する。  続けて、修羅は義輝へと再び口を動かして見せた。 「私が忍具の持ち出しを断行した素因には、生徒会長が言う『反乱分子』の1つに、こうと、そそのかされたからだ。  ここを統治している大原田市は、いずれ新体制が敷かれ、古い考えを持つ人間達は全て排除される。  今、もし忍具を持ち出したとしても、少しの間、姿をくらましていれば、新体制になった時に全て無罪になるから安心しろ、と」  その上で、修羅は最も逃げきれる可能性が高いルートを教えてもらい、なおかつ、自衛団が今は動けない事実まで教えられた。  果たして。 「私は、暁の忍者に言われるままーー市外に出ても停止されない最先端医療忍具を装備し、この町から離れる事を決意したのだ」  かつての自分・・・幼い頃に受けた、あの絶望的な悲しみをーー同じ思いを、一人でも少なくさせる為に。
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