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もう、確実にお冠な真さんは、憤怒の形相を誰が見てもわかるまでに濃密に作っている。
この姿を見て、思わず義輝の逃走心に火が付きそうになった程だ。
義輝の本能は言ってる。
きっとーー否、間違いない。
何を言っても無駄だ、と。
「不意打ち? 笑わせないで?
今のは軽い挨拶ってトコ?」
どこの世界に、そんな殺伐とした挨拶があるんだよと、義輝は声を大にしてツッコンでやりたかったが、目前の真がスーパー怒り状態になっていた為、口から出そうになった台詞をそのまま飲み込むだけに留まるのだった。
そこから真は、ギロッ! と、義輝を睨む。
その形相は、もはや般若もビックリだ。
「一体、何? そもそも、私に隠し事をしてる時点で、かなりムカつくって言うのに、変な女までいるとか、あり得ないから!」
「ち、違うぞ、真さん! いいや、真様! お、俺はやましい事なんか、全然全くこれっっっぽっちもしてないんだ! 本当の本当だぞ!」
蛇に睨まれた蛙よろしく・・・義輝は、浮気の現場を押さえられた甲斐性なしの夫を演じるかの様な態度で、おもむろに狼狽えてみせる。
直後、修羅の眉がド派手によじれた。
もう、周囲の人間がドン引きする程に、おかしな眉の捻り方をしていた。
「何を狼狽えてるんだ義輝!
素直に、話せばいいだけじゃないか?
私とお前が、昨晩・・・めくるめく悦楽の園に身を委ねた、あの燃える様な一夜を、堂々と口にすればいいのだ!」
「誰がそんな事したって言うんだよっっっ!」
真実のしの字もない虚言を堂々と胸まで張って叫ぶ修羅に、義輝は全力で反論した。
目からは、滝の様な涙がドバドバッ! と流れていた。
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