ある忍者の打算的な恋模様

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 夏休みも、いよいよカウントダウンを迎えようとしていた日曜の午前十時過ぎ。 「どぉぉぉぉぉして、こうなるんだぁぁぁっ!」  ーーと、冒頭から意味不明な叫び声を上げ、周囲の家族連れの視線を一身に浴びながらも、さして広くもない通路を遮二無二走り抜ける義輝がいた。    大原田市の中心市街地の一角にある、比較的大きなアミューズメントパークを、一人短距離走する義輝は・・・まぁ、傍目から見たらただのキチガイにしか見えなかった。  一体、何が起こっていると言うのだろう?  なんらかの勝負に負けて、罰ゲームでもしていると言うのか?  じかし、そこを加味しても、かなり過酷な罰ゲームに見えた。  一人短距離走が、実は一人ではない事がわかるのは、ここから数十秒後の事である。 「まぁてぇいぃぃ! てか、マジで逃げるな輝ぅぅっ!」  必死の形相で駆け抜け、家庭サービスに勤しむお父さんと子供達に一陣のカオスを、爽やかにプレゼントした義輝から遅れる事、数十秒で、新たな混沌がダミ声も高らかに駆け抜けて行く。  この第二波によって、ほんわかした雰囲気は瞬殺され、二人いた子供達が一斉に泣き出してしまうのだが、微笑ましい余談と言う事にして置こう。  なにはともあれ。  事実を知れば、当人は不本意極まりないと怒鳴り散らして来るかも知れないが、その顔を見た瞬間に子供達が泣き出してしまう程の般若面した真は、魔王張りのカオスオーラをほとばしらせて、通路を爆走していたのだった。  
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