ある忍者の打算的な恋模様

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「よくもまぁ・・・綺麗にやれたものだな」  これがボクシングなら、絶対にタオルを投げられてるだろう賛嘆な姿の義輝に、修羅は思わず苦笑してしまう。 「少しは反撃すれば良い物を・・・」  苦笑しながら、修羅は義輝に近付くと、軽く右手をかざして見せる。 「・・・?」 「じっとしていろ」  今一つ状況が解らず、ハテナ顔になっていた義輝を前に、修羅は柔和な笑みをやんわり作って見せた。  ぽうぅぅ・・・  彼女の掌から、ほんのり淡い光が放たれたのは、そこから間もなくの事である。  どこか神秘的で、微かに温もりを感じる淡い光を当てられた義輝は、パンチドランカー寸前の傷を見る間に回復させて行く。  どうやら、これはーー 「医療忍具の一つ『息吹』だ。  まさか、こんな所で役に立つとは思わなかったがな?」  修羅は少し冗談混じりに言う。 「すげぇな・・・」  思わず、そうと呟く義輝。  忍具の力は、現代科学からすれば魔法にも匹敵する凄まじい物だと義輝なりに理解していたつもりだが、今の修羅が行っている治療は、完全な魔法にしか見えない。  真の鉄拳によって、顔中のいたる所に生まれた腫れは物の数十秒で引いて行き、今では何処を殴られたのかを探す事すら出来ない。  口の中にあった鉄っぽい血の味も・・・今では完全になくなっている。 「どうだ、義輝? もう痛くないか?」 「ああ・・・マジでびびった」  ニッコリ、微笑みながら訪ねた修羅に、義輝は顔でも驚きを露にして、二度三度と頷いて見せた。 「よかった」  修羅は満面の笑みだ。  良く比喩で天使の笑みなどど表現される事があるが・・・義輝の瞳には、比喩でもなんでもなく、修羅の笑みが天使の笑みに見えた。 
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