第1章

12/30
前へ
/30ページ
次へ
さらに二人の男性が近づいてくる。先に立っている人の眼光の鋭さは厳しくて刺されそうで、香苗は知らず身構えた。一歩後ろの人は面白そうに「京は井戸でも魚が釣れるのか」と笑い、先の人に「馬鹿が。大体魚じゃねえだろう」と頭をはたかれた。 「痛いな、もう。土方さんは冗談が分からないから」 「壬生浪士組の屯所の井戸から女が出てきて冗談どころじゃねえよ」 突っ返しながら、へたりこんでいる香苗の傍らに片膝をつく。土方さんと呼ばれる男性は、ぎろりと香苗を見据えた。容貌はいかつく、伸びた背が威厳を醸しだしている。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加