第1章

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「井戸から女が出てきたとか言うじゃないか。これは面白いと思ってね」 「町娘が錯乱して落ちただけです」 「だから、井戸になんか落ちてないって言ってるじゃないですか! 気がついたら井戸のなかに……」 言い募りながら、香苗は新しくあらわれた男性の名にも聞き覚えがある気がした。慶喜。もしかしたら、この人の名は徳川家一橋慶喜ではないだろうか。だとしたら、徳川家最後の将軍になる人物だ。今何の役職に就いているかまでは分からないが、大物であることに間違いない。現に、土方がかしこまっている。
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