第1章

21/30
前へ
/30ページ
次へ
香苗の真剣な様子に圧されて、隊士達が動きだす。香苗は数枚の手拭いも用意させ、自分がまだずぶ濡れなのも忘れて鍛練場に案内させた。そこに、盥二つの水と手拭い、砂糖と塩が運ばれる。 香苗はまず、飲ませるための経口補水液を作った。目安は水1リットルに対して砂糖小さじ4、塩小さじ半分。目分量になってしまうが仕方ない。 「あの……飲ませるなら、これを」 「ありがとう」 水を汲んでくれた隊士が竹筒を差し出してくれる。頭を下げて受け取り、作った経口補水液を詰める。 「これを飲ませてあげてください。次に体を冷やします。着物を脱がせて、楽にさせてください」 冷やすところは首と腋と足の付け根。手拭いを井戸から汲んだばかりの冷たい水に浸して軽く絞り、あてがってゆく。 香苗の態度の急変に、そこに居合わせた皆が戸惑っているのが伝わってきたが、今は目の前の患者を救うのが第一だ。左之介と呼ばれた人はかなり汗をかいている。加えて、鍛練場は熱気が籠もっていて蒸し暑かった。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加