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「降りだす前に帰らないと……」
小さく独りごち、空から目線を戻す。
帰ったら今日の茶会について母に話し、明日のための予習と復習をする。明日は学校を終えたら家庭教師が来るので、課題も仕上げておかないといけない。
香苗はまた溜め息をついた。親に従う日々は、自分の人生を生きている気がしない。
家路を急ごうとする香苗の目にとまったのは、偶然という運命のいたずらだった。
路上の隅に、布を広げてアクセサリーを並べているのは、珍しくもないことだ。だが、そのなかの一つが香苗の目を引いた。思わず露店にしゃがみ、手にとってみる。
それは、おそらく天然石のブレスレットだ。手にした瞬間、雲間から光が射し込み、ブレスレットを照らす。
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