第1章

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香苗の言葉に、店主は微笑んだまま応えた。 「あなたが買える値段でいいよ」 「……それなら……」 香苗が財布を取り出す。しかし、こうした天然石の相場が分からずに戸惑っていると、店主は想像していたよりもかなり安い値段を告げた。 「そんなに安くていいの?」 「あなたになら特別って言ったろう? 必ず出逢えるよ」 「じゃあ……買います」 「ありがとう。このまま着けてく?」 「はい」 天然石のブレスレットを着けるのは初めてだったが、重さよりも胸が軽くなるような微かな高揚感に満たされた。心地よくて、外してしまうのがもったいなかった。
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