第1章

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がくんと支えをなくし、落ちてしまう。悲鳴をあげる余裕もなかった。 そのとき、意識が真っ暗になる。体とともに意識も落ちてゆく。何かが力ずくで奪うようにもっていかれる。 そして、意識が戻ると体は何か冷たいものに包まれていた。息を吸おうとすると、冷たいものが呼吸を塞ぐ。息苦しさに、それが水だと気づく。 下水道に落ちたのか。けれど、臭くない。とにかく浮き上がらなくては死んでしまう。苦しい。 香苗は必死になってもがいた。上を見ると、太い筒みたいなものの先に日射しが見える。 「……はっ……はあっ……」 辛うじて水面に顔を出す。そのとき、頭上から何かが降ろされた。ばしゃんと音をたてて。
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