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黒く濁った大きな鳥は、例によって下品な笑い声を僕の耳に残すと、どこかへ向かい飛び去って行った。
僕はその後も、何もいないベランダを眺めながら固まっていた。
どれぐらいの時間がたったのだろうか?
しばらくの間は放心状態だった。
どうして…僕が?
体中から生気を失った僕は、携帯を開くと、恵の番号へ発信した。
数コール鳴った後、元気な恵の声が僕の耳に入ってくる。
「もしもし、お兄ちゃん?」
「恵………鳥は?」
「来なかったよ!やっぱり埋めたのが良かったんだよ!」
「そっか……」
僕は携帯を手から落とすと、膝から崩れ落ちるように座り込んだ。
「もしもし、お兄ちゃん?もしもーし?」
信じたくはないが、事実を受け入れなければならない。
呪われたのは僕だ。
箱を開けたのは恵。
でも呪われたのは僕。
なぜ?どうして?
目の前が真っ暗になった。
僕に残された時間は一日。
今更呪いを解く方法なんて調べられない。
そんな時間はない。
もう何も…考えられない。
半分意識を失った僕は、そのまま座り込んでいた。
「いやー、人間の念というものは恐ろしいですね。時にこんな悪霊を生んでしまうのですから」
「そうですね。それは犯罪を犯す人間にも言えることなんです。地位や名誉、金や想い人。そのような念に縛られた人間は、思わぬ犯罪に手を染めてしまうのです」
僕の耳に、聞こえているのかいないのか、テレビから発せられる言葉が入ってきた。
僕は何の関係もない人間の念に、命を奪われてしまうのか。
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