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「お兄ちゃん…これって…」
恵が何を言いたいかは分かっている。
僕もこの箱を見たとき、真っ先に連想した物がある。
恵はもちろん、この町に住む者なら誰でも知っていることだ。
僕が回答するより先に、恵が口を開いた。
「オアフの…箱」
「くだらない。ただのイタズラだ」
「でも…真っ白い箱」
「イタズラだって」
箱をまじまじと見ると、不思議な構造をしている。
底の部分と、その他の部分をガムテープで止めてあり、バラエティ番組で使われる箱のような造りだ。
「お兄ちゃん…どうする?」
「どうするって、何が?」
「開けてみて?って…書いてあるよ」
「送り主がどんな顔して書いたんだか分からないけど、律儀に付き合う必要はない。後で捨ててくるよ」
「でも…気になる。何が入ってるのかな」
「止めとけって」
イタズラなのは分かってるけど、万が一ってこともある。
オアフの箱は、開けた者に呪いをかける。
なら開けずに捨ててしまえばいい。
これがイタズラだろうが、本当だろうが、僕達には関係のないことだ。
「僕は晩飯の支度を続けるから、大人しく勉強でもしてろよ。そろそろ大学受験だろ?」
恵にそう告げると、僕はキッチンに戻った。
オアフの箱。
なぜそんな名前が付いたのかは分からない。
当たり前のように、そう呼ばれていた。
ハワイにオアフ島ってところがあるけど、関係があるのかないのか。
一説によれば、カメハメハ大王の時代に虐殺された、何千人ものオアフの島民の呪いが込められているとされる。
なぜそんな物がここ日本で、その中でもど田舎な僕達の町で流行っているのか。
それは誰にも分からないことだ。
特別追求するつもりもない。
なぜなら、僕はこの手のオカルト話が苦手だからだ。
調理を続けながら物思いにふけっていると、僕の部屋から聞こえてはならない音がした。
ビリビリと、テープのような物を剥がす音が、家中に響きわたった。
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