オアフの箱

4/13
前へ
/13ページ
次へ
「お兄ちゃん…これって…」 恵が何を言いたいかは分かっている。 僕もこの箱を見たとき、真っ先に連想した物がある。 恵はもちろん、この町に住む者なら誰でも知っていることだ。 僕が回答するより先に、恵が口を開いた。 「オアフの…箱」 「くだらない。ただのイタズラだ」 「でも…真っ白い箱」 「イタズラだって」 箱をまじまじと見ると、不思議な構造をしている。 底の部分と、その他の部分をガムテープで止めてあり、バラエティ番組で使われる箱のような造りだ。 「お兄ちゃん…どうする?」 「どうするって、何が?」 「開けてみて?って…書いてあるよ」 「送り主がどんな顔して書いたんだか分からないけど、律儀に付き合う必要はない。後で捨ててくるよ」 「でも…気になる。何が入ってるのかな」 「止めとけって」 イタズラなのは分かってるけど、万が一ってこともある。 オアフの箱は、開けた者に呪いをかける。 なら開けずに捨ててしまえばいい。 これがイタズラだろうが、本当だろうが、僕達には関係のないことだ。 「僕は晩飯の支度を続けるから、大人しく勉強でもしてろよ。そろそろ大学受験だろ?」 恵にそう告げると、僕はキッチンに戻った。 オアフの箱。 なぜそんな名前が付いたのかは分からない。 当たり前のように、そう呼ばれていた。 ハワイにオアフ島ってところがあるけど、関係があるのかないのか。 一説によれば、カメハメハ大王の時代に虐殺された、何千人ものオアフの島民の呪いが込められているとされる。 なぜそんな物がここ日本で、その中でもど田舎な僕達の町で流行っているのか。 それは誰にも分からないことだ。 特別追求するつもりもない。 なぜなら、僕はこの手のオカルト話が苦手だからだ。 調理を続けながら物思いにふけっていると、僕の部屋から聞こえてはならない音がした。 ビリビリと、テープのような物を剥がす音が、家中に響きわたった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加