13 追憶-2 #2

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ダメだ、その気になったりしちゃダメ。 私は、こう言うのに慣れていない。 深入りしたら、きっと後戻り出来なくなってしまう。 そう、心の隅で本能が警鐘を鳴らしている。 だけど――、 「返事は? イエス、ノー?」 「……」 「イエス、オア、ノー?」 向けられる視線が、熱を帯びる。 ジリジリと、 夏の太陽に照らされ色づき始めたトマトは、どんどん赤みを増して完熟状態。 そうなれば、後は重力に引かれて地面に落ちるしかない。 「イ、イエス……」 それに。 私も、この人を、榊東悟と言う人を、もっと知りたい。 口から零れだした答えは、 そんな、隠しようがない本心の発露だった。
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