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「親父と社長が昔の同僚で、俺がガキの頃からの付き合いなんだ。だから、『親戚のおじさん』みたいなものかな」
「……」
「昔から思いついたら即行動の、イタズラ好きの子供みたいな人でね。ああ言う顔をした時のあの人は、何か企んでいることが多いんだ。だから、どんな裏があるんだろうと観察していたんだが、やっぱり簡単に尻尾は出さないな、あの狸親父は」
はあ、さようでございますか。
妾腹ショックが大きすぎて、まともな反応ができません、私。
ここで、いきなりおちょくりますか、普通。
「高橋さーん。聞いてますか?」
「聞いていません。なんだか、仮面が壊れかけてませんか、課長。今から接待パーテイなんですから、ちゃんと被り直して下さいね!」
やめてよ、もう。
これじゃ、まるで、昔の東悟と居るみたいじゃない。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、課長の浮かべた愉快そうな笑顔はまるで、夢に見たあの頃の東悟のままで。
胸の奥深いところで、悲しみにも似た痛みを伴った甘い感情が、ユラユラと揺らめいているのを感じた。
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