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「ばか、何やってるのよ、あんたはもう18歳の世間知らずな女の子じゃないんだから、しっかりしろっ」
低く言い捨てるように自分に言い聞かせ、バッグから携帯電話を取り出し、登録してある番号にダイヤルする。
仕事上必要になるからと、始めに教えられた課長の携帯番号。
まさか、こんな形でかけることになるなんて思いもよらなかった。
プルル、プルルと呼び出し音が聞こえるたびに、
ドキンドキンと鼓動が大きく高鳴っていく。
プツン、と電波がつながる音がして、息を飲んだ。
一瞬後、
「高橋さん?」
耳元に響く優しい声音に、全身に広がったのは、言いようのない安堵感――。
付き合っていた頃、いつもより低く聞こえる電話越しの、この声が好きだった。
電話がかかってくると、この声をいつまでも聞いていたくて必死で話題を探して、少しでも通話時間を長引かせようと頑張っていた、18歳の私。
その頃の気持ちが一気に甦ってくる。
「課長……」
思わず鼻の奥にツンと熱いものが込み上げ、言葉が続かない。
やだ。
なにこれ?
こんなことくらいで、何、やってるのよ、私。
お願いだから、震えるな。
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