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「人間、年を重ねても、なかなか本質は変わらないものだと思って」
本質?
それって、私のことを言っているのだろうか?
それとも、課長自身のこと?
「変わらないから、本質なんじゃないですか?」
思いついたまま素直にそう言うと、課長は再び口の端を上げた。
でも、今度の笑みはどこかさみしげで、
「そうだな……」
落とされた呟きもやはり、心なしか元気がないような。
何か言葉をかけようとした時、『チン』とベル音が鳴り、目的階へ到着したことを告げた。
「さあ、行こうか」
「はい」
一歩先を踏み出した課長の横顔からは、もうさっきまでの愁いを含んだ表情はきれいに払拭されていた。
そのいつも見慣れているはずの『ニコニコ営業スマイル』がなぜか寂しく感じてしまうのはどうしてだろう。
「高橋さん?」
「は、はい!」
いけない。仕事だった。
ぼんやりしてはいられない。
色即是空、色即是空。
よけいなことは考えない。
今は、パーティでヘマをしないように、その最低ラインだけを考えよう。
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