15 告白-2

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「人間、年を重ねても、なかなか本質は変わらないものだと思って」 本質?  それって、私のことを言っているのだろうか? それとも、課長自身のこと? 「変わらないから、本質なんじゃないですか?」 思いついたまま素直にそう言うと、課長は再び口の端を上げた。 でも、今度の笑みはどこかさみしげで、 「そうだな……」 落とされた呟きもやはり、心なしか元気がないような。 何か言葉をかけようとした時、『チン』とベル音が鳴り、目的階へ到着したことを告げた。 「さあ、行こうか」 「はい」 一歩先を踏み出した課長の横顔からは、もうさっきまでの愁いを含んだ表情はきれいに払拭されていた。 そのいつも見慣れているはずの『ニコニコ営業スマイル』がなぜか寂しく感じてしまうのはどうしてだろう。 「高橋さん?」 「は、はい!」 いけない。仕事だった。 ぼんやりしてはいられない。 色即是空、色即是空。 よけいなことは考えない。 今は、パーティでヘマをしないように、その最低ラインだけを考えよう。
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