634人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
シンデレラの魔法は、午前零時になれば消えてしまう、時間制限付きの儚い魔法。
日頃着ることのない高級服を纏って、いつもと違うメイクで変身して、
一夜限りのパーティに出ている、
まるで、今の私みたいだ。
「ありがとうございます。素直に喜んでおきますね」
「今日は、社長の名代ですか?」
「あ、はい。実は社長が急に都合が悪くなってしまったものですから、私と、工務課の課長と2人でお邪魔したんです」
「工務課の課長って、木村さんだっけ?」
「あ、いいえ、木村は今病気療養中でして、新任の谷田部と一緒に来ています」
「谷田部さん?」
「まだ就任して間もないので、飯島さんは面識がないと思いますけど……」
入り乱れる人波の中に視線を巡らせると、私が来ないことに気付いたのか、課長が戻ってくるのが見えた。
「高橋さん、こちらの方は?」
歩み寄ってきた課長は、私の傍らに立つ飯島さんに、ニコニコと人好きのする笑みを向けた。
うわ、これ、営業スマイル全開だ。
と、なぜかビビりながら、
「課長、こちらは飯島さんです。清栄建設の現場監督さんで、私も、何度も同じ現場でお世話になっているんです」と紹介をする。
最初のコメントを投稿しよう!