15 告白-2

12/13
634人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
何人かの顔見知りの監督さんや業者の人たちと挨拶を交わしながら、隙間を縫って少しばかり、料理を口に運ぶ。 でもこういう場所って、せっかくのご馳走も食べた気がしない。 そもそも誰に会うか分からない緊張の連続で、味わっている余裕なんてないけれど。 そして、そんな私の傍らには、如才なく挨拶を交わし名刺交換に励む課長と、なぜか色黒の御仁がずっとくっ付いていた。 「しかし、今日の高橋さんは、綺麗だなぁ。本当、惚れ直しそうです」 「飯島さん、もしかして酔ってますか?」 なぜか、コバンザメのごとく私の傍らにくっ付いている飯島さんに、本当は声を低めて言いたいけど、悲しいかな相手は今日の主催者側の監督さん。 むげに冷たい態度を取るわけにもいかず、にこやかな、でも多分引きつっているだろう笑顔をどうにか向けている。 「俺、酒にはめっぽう強いので、ちょっとやそっとじゃ酔いませんよ。せっかく色々な酒が揃っているから、飲み比べしてみますか?」 いつの間にか一人称が『私』から『俺』になっている。 「あ、あははは、ご遠慮しておきます。私はあまり強い方じゃないので、きっと勝負になりませんから」 『課長の歓迎会の悪夢』が脳内を勢いよく駆け巡り、更に笑いが引きつってしまう。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!