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大きな工事を受けた時には、チームを組んで図面を書き上げることはよくあるけど、課長自ら部下の仕事を手伝うなんてことは、今までなかった。
猫の手どころじゃなく、課長の腕なら主戦力でもいけるのだから、純粋に仕事面だけを見れば大助かりなのだけど……。
いっしょに居る時間が長ければ長いほど、私の心の中に降り積もり着実に堆積していく『何か』。
それが、いつかいっぱいになって溢れ出してしまいそうで、怖くて仕方がない。
「そうですよー梓センパイ。立ってるものは課長でも使うんですよー」
隣の図面台から、おどけた声が飛んでくる。
美加ちゃんも、ご多分に漏れず残業組だ。
「センパイは、いちばん担当している工事数が多いんですからね。いーですか？ もし無理がたたって先輩に倒れられたら、そのとばっちりは、『あたし』にモロに来るんですからね。課長には責任をもってフォローしていただかなくちゃですよ。ね、課長！」
「ああ、了解、了解」
お願いだから美加ちゃん、課長を煽らないでっ。
『メッ』っと目力を込めて、美加ちゃんに渋面向けるけど、とうのご本人様はそんなことなどどこ吹く風で、逆に『頑張れ』とばかりにガッツ・ポーズなんかを返してくるものだから、肩の力が抜けてしまった。
ああ、仕事をしよう。仕事を。
それが精神衛生に、いちばんいい。
あきらめの境地で一つ小さなため息を吐き、一般事務職の女の子たちが賑やかに退社していく騒めきを背中越しに聞きながら、頭を仕事モードに切り替える。
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