545人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
「好きな人でも、いるんですか?」
真っ直ぐな、
きっと嘘をついたら見透かされてしまいそうなくらいに真っ直ぐな瞳が、狼狽えまくる私を、情け容赦なく射抜く。
私は今も『東悟』を、思いきれないでいる。
谷田部課長に、惹かれずにはいられないでいる。
でも、本当のことなど言えるはずがない。
だからやっぱり、口からこぼれ出すのは嘘ばかり。
それが何だか切ない。
「好きな人は、いません。でも、今は仕事に専念したいんです。だから……」
『付き合えません』と、ぴしゃりと断れない自分のこの優柔不断さが恨めしい。
「仕事は、好きなだけしたらいいんです。俺だってそうですよ。でも仕事と恋は別物だと俺は思います。別に仕事に専念したって、恋はできるでしょう?」
「それは、そうですけど……」
ああ、どうしたら、分かって貰えるだろう。
どうしたら、この人傷つけずに、諦めて貰えるだろう。
最初のコメントを投稿しよう!