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自分の優柔不断さと、あまりの要領の悪さに思わず眩暈を覚えたその時、
「ええと、お取込み中、申し訳ない」
背後から、聞き覚えのある声が降ってきて、思わずキャッと飛び上がりそうになってしまった。
カクカクカクと、
まるで糸の切れた操り人形のように、
ぎこちない動作で後ろを振り返れば、そこには声の主・谷田部課長の佇む姿があった。
ニコリと微笑みを湛えたその表情からは、課長の心の中を伺い知ることはできない。
今の話、聞かれてしまったの!?
すうっと、首筋の当たりの血の気が一気に引いて、思わず背筋に震えが走った。
「飯島さん、申し訳ないですが、時間も遅いことですし、もうそろそろお開きにしませんか?」
やんわりと話の終了を提案する課長に、飯島さんは挑戦的にすら見える、真剣なまなざしを投げつける。
「谷田部さん、今の俺の話、聞いてましたよね?」
私からは死角になっていて気付かなかったけど、飯島さんからは、課長が来るのが見えていたのだろう。
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