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もうすぐ午前零時。
シンデレラの魔法は、すぐに消えてしまう。
どうせ消えてしまうものならば、最初からないほうが良いのだろうか?
それとも、
一時でも、幸せな夢を見られた方が良いのだろうか?
どちらが、より、幸福の領分に近いのだろう?
2人だけを乗せたエレベーターが、夢の世界から現実へと降りていく。
週末が明けて月曜日が来て、また慌ただしい毎日が繰り返される。
それは、退屈で、とても幸せなこと。
それ以上を望んだら、きっとバチがあったてしまう。
ぼんやりと見つめていた、まだ消えきらない町の灯が、不意にぐにゃりと歪んで滲んでいく。
ばか、泣くな。
こんな所で、泣くんじゃない。
あんたが泣くことなんて、何もない。
頬を伝い落ちるモノを悟られまいと、階下の景色を見ているふりで表情を隠したのに。
ふっと、頬に、温もりが触れた。
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