15 告白-2 #2

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長くて繊細な指先が、濡れた頬を優しく拭っていく。 「梓……」 耳元で、静かなテノールが甘い囁きを落とす。 だめだ。 だめ。 流されたら、だめ。 そんな微かな抵抗は、力強い腕に引き寄せられ、その懐に抱え込まれて、 あまりにも脆く崩れさった。 真摯な黒い瞳に、視線を絡め取られて。 躊躇うように、そっと触れた唇が、徐々に熱を帯びて深みにはまっていく。 触れたいと、望んでいたのは、たぶん私の方。 なのに、触れてしまえば、否が応でも気づかされてしまう、変えようがない残酷な現実。 何もかも捨て去って、溺れてしまえたらどんなに楽だろう。 でも、どう足掻いたところで、私は私以外の人間にはなれない。 不器用なのも、頑ななのも、全部私と言う人間の変えようがない本質。 だから。 その腕の戒めが緩んだ瞬間、私は、スルリと抜け出してエレベーターの隅に背を寄せた。
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