545人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
「や……だなぁ、課長ってば、何酔っぱらっているんですか? これってセクハラですよー」
もう泣き笑いのぐしゃぐしゃな顔で、
それでも笑って。
このキスにどんな意味があるかなんて、考えちゃだめだ。
これは、ただの酒の席での、偶発的事故みたいなものなんだから。
「梓、俺は……」
顔を見なくても分かる、きっと苦しそうな表情をしているはずのこの人を、これ以上惑わせたらいけない。
「今日の所は、ビギナーズラックで、大目に見てあげますから。でももうだめですよ。今度やったら、狸親父に言いつけますからね!」
広がる闇は深く、
募るだけの想いは、虚空を舞い落ちる季節外れの淡い雪のように、ただ静かに心の深淵に降り積もっていく。
いつか、この雪も、溶ける日が来るのだろうか。
それとも……。
今の私に、答えは見えない――。
最初のコメントを投稿しよう!