16 郷愁

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さすがに、故郷を遠く離れたこの場所では、その願いは叶うべくもない。 でも、せめてサバの味噌煮缶でも買って帰ろうと思った。 缶詰だからとバカにはできない。 『お袋の味』には及ばずとも、旬のサバを使って作られている缶詰は、かなり美味しい。私の定番の『家ごはんのおかず』だ。 ヘコんだ時は、美味しいものを食べるに限る。 ホテルの高級なディナーには及ぶべくもないけれど、私にとっては、何よりのご馳走だ。 確か冷蔵庫の中に、缶ビールと缶酎ハイが数本残っていたはずだから、適当におつまみも買って、1人で酒盛りをしよう。 そして、忘れるんだ。 今日あったことはみんな夢だったと、綺麗さっぱり忘れる。 そして、月曜には元気に会社に行こう。 『飯島さんに告られちゃったよー!』って教えてあげたら、どんな顔をするだろう、美加ちゃんは。 驚くだろうか?  それとも喜んでくれるだろうか? そんな想像をしていたら、落ち込んでいた気持ちが少しだけ浮上してきた。 美加ちゃんパワー、恐るべし。 こういう時に、友達ってありがたいって、しみじみと思う。 こうして、その存在だけで、私に元気をくれるのだから。 本当、感謝してもしきれない。
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