16 郷愁

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コンビニからアパートまでは、徒歩3分の距離しかない。 周囲は閑静な住宅街で治安も良いから、買い物をしてこのまま歩いて帰ろう。 そう思って、課長にその旨を告げて、コンビニの駐車場で停まったタクシーを降りた。 「課長、今日は、お疲れ様でした。お先に失礼します」 ペコリと頭を下げて、返事を待たずに逃げるようにクルリと背を向け、さあ『いざコンビニへ!』と、イソイソと店内へ足を向けた。 「いらっしゃいませー!」 深夜にも関わらず、若い男性店員さんの元気な声が笑顔と共に向けられ、笑顔を返して店内に足を踏み入れる。 週末の為か、私と同じおつまみ目的らしい人影が、ちらほらと見えた。 レジ脇に置かれているグレーの買い物カゴを手に取り、左ひじにひっかけて、入口側の窓辺にそって、ブラブラと商品を物色する。 「いらっしゃいませー」 また店員さんのウエルカムボイスが上がり、同好の士の訪れを告げる。 さあて、まずはこれよね。 と、入口際にあるアイス・ボックスを覗きこんだ。 あ、新発売のアイス・クリームがある! 目ざとく、『新発売!』の赤いシールが張られた、アイスクリームのカップに気付き、手を伸ばして一つ取り出しカゴに入れようとしたその時、 スッと背後から、見覚えのあるダーク・グレーのスーツに包まれた長い腕が伸びてきて、ドキンと鼓動が大きく跳ね上がった。
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