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その長い指が、私が手に取ったと同じ商品を掴み『私の持っているカゴの中』にポイっと投げ入れてくる。
え……?
恐る恐る体をねじって、後ろのに佇む背の高い人物へと視線を巡らせ、目に映ったその人の顔を、呆然と見つめた。
少し憮然とした表情は、どこか怒っているようにも見える。
自分で頭をかき回したのか、きちんとセットされていた前髪が、パラパラと額に落ちかかっていた。
なぜそんな表情をしているかよりも、
なぜその人がここに、このコンビニに居るのかが理解できない。
驚きと、困惑。
そして、本能で感じる、危険信号。
色々なものを内包した、それでもやはり驚きの成分を一番多く含んだ掠れた声が、口から押し出される。
「課長……?」
谷田部課長だった。
タクシーで、自分のアパートに帰った筈の上司様の姿が、なぜか目の前にある。
理解しがたい状況の中で、はっと我に返った私は、慌てて外へ、先刻タクシーが停まっていた場所に視線を投げた。
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