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でも、やっぱり、
どう考えても、このまま課長と2人っきりはまずいと思う。
「ありがとうございましたー!」
相変わらず元気な店員さんの声と笑顔に見送られて、コンビニの駐車場の端まで歩いてピタリと足を止める。
コンビニの袋を持って、不思議そうに私の顔を覗き込むその顔を、きっと見上げ。
意を決して、今度はびしっ! と言い渡す。
「課長、タクシーを呼びますからね、いいですねっ!」
「呼んでもいいけど、せめて腹ごしらえをしてからにしてくれないか?」
ボソリいうその言葉と、『グゥ~ッ』というひょうきんな音が重なった。
「ほら、腹の虫が文句をいってる。腹が減っては戦はできないってね。昔の人もいってるだろう?」
戦って、
今から戦をするんですか、あなたは?
「……約束する。食事が終わったらすぐに帰る。だから、俺を信用してくれないか?」
「……」
ボソリと落とされた呟きに、答えることが出来ない。
この人を信用していない訳じゃない。
たとえ酔っていたとしても、嫌がる人間に無理強いをするような人じゃないって、良く分かっている。
酒の勢いで女をどうこうするような男なら、歓迎会の夜、私のアパートに泊まった時に、どうにかなっていたはずだ。
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