15 告白-2 #2

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飯島さんとは仕事上だけの付き合いで、『清栄建設の陽気な監督さん』と言うイメージしかなかったけど、こうしてお酒の席で腹を割って話してみると、陽気なだけじゃなく底抜けに愉快な人だと分かった。 好きなお笑いコンビの話や、映画の話、果ては建築論まで飛び出したこのひと時は、『接待』と言う枠を飛び出して、私にとっても、とても楽しいものだった。 飯島さんは、命名するならきっと『愉快上戸』。 一緒にお酒を飲んで、こんなに楽しい人は初めてだった。 時計の針は午後11時を回った所。 もうすぐ、シンデレラの魔法が解ける時間だ。 でも、こんな楽しい魔法だったら、たまにかかっても良いかな? なんて考えていた時、プルル、と課長の携帯電話が着信音を上げた。 着のポケットから、携帯電話を取り出して着信窓に視線を走らせた課長の表情が、フッと和んだ。 「ちょっと、失礼」 そう飯島さんに断って、スッと席を立った課長は、お酒が入っているとは思えない確かな足取りでラウンジの外に歩いて行く。 あれはたぶん、実家からの電話だとそう思ったその瞬間、胸の奥に、たとえようがない痛みが走った。
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