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扉の向こう側に見えなくなった課長の姿を辿るように、ぼんやりと視線を彷徨わせていたら、不意に、飯島さんが口を開いた。
「高橋さん、ひとつだけ、聞いても良いですか?」
「はい?」
さっきまでとは明らかに違う、真剣さがにじみ出るような低いトーンの声音にドキリとして、飯島さんに視線を移した。
少し明るい色合いの真っ直ぐな瞳に視線が捕まり、変な風に鼓動が乱れだす。
「飯島さん?」
思わず息を飲むその私の息の根を止めるような、とんでもない質問を、飯島さんは静かに放った。
「高橋さん、谷田部さんとは、どういう関係なんですか?」
『谷田部さんとは、どういう関係なんですか?』
エコー増幅しながら、そのフレーズが脳内を何往復かした後やっと、私はその質問の重大かつ深刻さに気付いて身を強張らせた。
「高橋さん、答えてくれますか?」
……え、ええっ!?
多分こう言う状況を称して、晴天の霹靂。
または、絶体絶命と言うのだと思う。
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