15 告白-2 #2

9/20

545人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
平気で嘘をつける性分ではないと思う。 でも、嘘も方便。 ここはなんとか嘘をつき通さなければ。 フリーズ状態の脳みそをフル回転させて、それだけを念頭に置く。 第三者に『谷田部課長との関係』を問われれば、それはもちろん。 「上司と部下の関係です……けど?」 若干、語尾が変なふうに掠れたけど、なんとか少しばかり口の端を上げて、それだけは言うことに成功した。 でも飯島さんはまだ納得の行かない様子で、 「本当に、それだけですか?」と問いかけてくる。 それだけじゃないけど、それは言えないんです。 などと本音が言えるわけもなく、私は更に強張る口の端を上げて、嘘の言い訳を続けた。  「ええ、もちろん、それだけの関係ですよ。いやだなぁ、いきなり真剣な顔で何を言い出すのかと思ったら、飯島さんったら。谷田部課長は結婚されていて、可愛いお嬢さんもいるんですよー」 内心の動揺を悟られまいと、おどけて言う私の言葉に、飯島さんは心底ホッとしたように大きく息を吐き出した。 そこでチクリと感じる罪悪感。 やっぱり、嘘は後味が悪い。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

545人が本棚に入れています
本棚に追加