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「あ、おはようございますっ」
やだ。どうかしてる。
こんな時に、東悟とのことを思い出すなんて。
飯島さんに、失礼も良いところだ。
そんな私の動揺など知るはずもない飯島さんは、笑顔で荷物を手渡してくれる。
「はい、これ、預かった荷物です。一応、中を確認して下さい」
「ありがとうございます。え、と……」
ペコリとお礼を言って、見覚えのあるブティックの赤いロゴ入りの白いペーパーバッグを受け取り、中身を確認すれば、見覚えのありすぎるグレーのパンツスーツが一式。
間違いなく、私のものだ。
「間違いありません。私の荷物です」
「貴重品とかは、大丈夫ですか?」
「はい。もともと着換えしか入っていませんので」
「それは良かった」
ニコニコと邪気のない笑顔を向けられて、否が応でも『言うべきことを言わなければ』という緊張感が高まって、ますます鼓動が早まっていく。
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