17 逢瀬-1

7/20

576人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
ま、まずは、お礼の品を渡す! 心で自分に叱咤激励。 「わざわざすみませんでした。これつまらないものですが、お茶うけにでもどうぞ!」 用意していた、おせんべいの詰め合わせ入りの紙袋を、ズイっと捧げ渡す。 「いやぁ、返って気を遣わせてすみません。じゃ、遠慮なく頂きます」 ありがたいことに、飯島さんは言葉通りに遠慮なく受け取ってくれた。 よしっ。まずは第1段階クリア! つ、次が問題だ。 言え、言うんだ私っ! 大きく息を吸い込み、息を止めて。 「飯島さん、じ、実はっ――」 「まあ、話は後からゆっくり。まずは出かけましょう」 クルリと踵を返すと、飯島さんは助手席側のドアを開けて、『さあ、どうぞ』とばかりに、私に乗るように手招きした。 「え? あ、あのっ!」 優柔不断の重い鎧を必死で脱ぎ捨てて、意を決して口を開いたのに。 『お気持ちは、とても嬉しいんですけど、実は好きな人がいるんです。だから、お付き合いはできません』 何度も脳内シミュレーションした肝心のその言葉は、寸前の所で飯島さんの行動で遮られてしまった。 それどころか、このままじゃデートコースまっしぐら。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

576人が本棚に入れています
本棚に追加