17 逢瀬-1

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刻一刻と、『その時』が近づいていた。 暴れ出した鼓動と共に高まっていく初めての感覚に、全身がピリピリと張りつめていく。   力を込めて握りしめた手のひらから伝わるリズミカルな振動が、早まる鼓動に拍車をけて、更に私を追い詰める。 「うっ……」   あまりの緊張感と恐怖感の合わせ技に、思わず口からうめき声が漏れてしまう。 怖い。 怖すぎるっ。 ギュッと握りしめた両手に、救いを求めるように更に力を込める。 女歴28年で体験するこの恐怖。 やっぱり、よすんだった。やめておくんだった。 後悔しても後の祭りで。 ことここに至ってしまえば、今更、逃げ出すことなどできはしない。 パニック寸前の脳細胞でも、そのくらいは理解できる。 でも、怖いものは怖いのだ。 『大丈夫。ぜんぜん怖くないから、平気ですよ』 飯島さんの陽気な笑顔に、コロッとその気になった自分の浅はかさが、恨めしい……。 この手のことは、はっきり言って得意じゃない。否、得手不得手以前に、大っ嫌いだっ! 「高橋さん、目を瞑っていたら、何も見えませんよ?」 俯いて、ひたすら体を強張らせている私にの耳元に、笑いを含んだ飯島さんの明るい声が落ちてくる。 そんなこと言っても、体が言うことを聞かないんですってば! 「ううっ……。どうせっ」 手足にめいいっぱい力を込めているせいで、思うように声が続かない。 「どうせ?」 「どうせ、メガネを外したら、何にも見えませんからっ」
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