17 逢瀬-1

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飯島さんが私を連れて行ってくれたのは、県北にある県で唯一存在する『遊園地』だった。 規模はさほど大きくなく、動物園と併設されている老舗のテーマパークだ。 今日は、折しも土曜日。 それも晴天のお昼時となれば、親子連れやカップルで大賑わい――、 かと思いきや、不景気な世情を反映してかそれほど人出は多くなく、どこかのんびりとした空気が漂っていた。 遊園地内の軽食スタンドでハンバーガーセットを買い込み、パラソル付のテーブルセットの一つに私と飯島さんは陣取った。 周りを見渡せば、幼い子供連れの親子が、賑やかにテーブルを囲んでいる姿が目に入る。 楽しげにじゃれあう子供たちと、それを見守る両親の慈愛に満ちた笑顔が、脳裏に懐かしい思い出を甦らせる。 私が小さい頃。 まだ父が健在で、母は忙しく仕事に追われることもない専業主婦だったあの頃。 あんな風に家族水入らずで、遊園地に連れてきてもらったことがある。 楽しくて、温かくて、そして、幾ばくかの切なさを内包した懐かしい記憶――。 「しかし、本当に初めてだったんですねー高橋さん」 愉快そうな飯島さんの声に、ハッと現実に引き戻される。 「あ、あはははは……」 ジェットコースターから、ヘロヘロの体で飯島さんに抱えられるように降りてきたのは、ついさっき。 まだ、足元がフワフワしている。
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