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「今朝電話を掛けたとき、高橋さんの声がものすごく沈んでいるような気がしたんです。ああ、何か嫌なことでもあったのかな? って。で、実際コンビニの駐車場で会ってみれば、泣きはらしたような目をしているし、ああ、これは何かあったなって」
それで少しでも笑ってほしくて、断られるのを覚悟で強引にデートに誘ったのだと、そう言って、飯島さんは笑った。
『何があったのか?』とは、問わない彼の優しさが、ありがたいと思った。
『明るく陽気で仕事ができる大手ゼネコンの現場監督さん』
この人は、思った通りの人だ。
ううん、
それ以上に、人の痛みを察することのできる優しい人。
正直に言って、私はこの人が好きだ。
もちろん、『LOVE』ではなく『LIKE』。
情愛ではなく、友愛。
だからこそ、伝えなくてはいけないことがある。
今が、それを伝えるときだ。
ぎゅっと、膝の上で両手を握りしめ、私は意を決して口を開いた。
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