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「あの、飯島さん……」
「はい?」
「昨日のお話しなんですけど――」
本当は、昨日の2次会で告白されたときに、きちんと答えなければいけなかった自分の気持ちを伝えるべく、言葉を続けようとしたその時。
ピョコピョコと、視界の端に、何か見覚えのあるものが動くのが見えた。
あれ?
脳裏をよぎる既視感に、ドキンと、鼓動が跳ね、ゆっくりと視線を巡らせる。
私から見れば前方。
食事スペースの脇の煉瓦敷きの通路を、元気に歩いてくる小さな人陰に、さらに深まる既視感。
女の子だ。
パステルピンクのワンピースに赤いサイドポーチを肩から斜にかけた、とても可愛らしい女の子が、私の方に近づいてくる。
好奇心と希望に満ちあふれた黒目がちの大きな瞳と、ほんのりと上気したプクリと丸みを帯びた頬。
彼女が動くたびに、ツインテールの髪がひょこひょこと上下して、その白い頬をサラサラと撫でる様は、まるで子ウサギのようだ。
少女の面差しは『ある人』を思い起こさせ、私の鼓動はますます大きく跳ね回った。
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